10.行政書士の「年収」と「ワークスタイル」

ここまで、「行政書士の年収」をテーマに、高年収を得るためのポイントに重点を置いて、行政書士という資格について見てきました。苦労して難関試験を突破したのだから、あるいはこれから挑戦するのだから、それに見合った高い年収を得たい、というのは当然のことだと思います。
その一方で、行政書士には、「年収」という尺度では測ることのできない、さまざまな魅力的なワークスタイルがあります。同じ士業でも、たとえば税理士や社会保険労務士など顧問契約が中心の資格ですと、安定した収入が見込めるかもしれませんが、そのぶん、時間的な制約も大きくなってきます。それに対して、自分や家庭の状況に応じた自由な働き方ができるというのは、行政書士という資格の大きな魅力のひとつかもしれません。
家計の足しに働きたいが、小さな子どもを置いて、長く家を空けるのは不安と考えるお母さんにとって、パソコンとプリンタさえあれば、自宅で自分のペースで働くことのできる行政書士のワークスタイルは、年収以上に魅力的に思えることでしょう。また、子どもが大きくなった後は、資格を活かして、勤務行政書士になるというのも、ママさん行政書士のワークスタイルのひとつです。
いつまでも仕事を続けたいと思っているシニアにとって、定年のない行政書士のワークスタイルは、これまた年収以上に魅力的に思えることでしょう。実際に、行政書士試験の合格者のうち、約4人に1人は40歳以上と言われています。年金をもらいながら、ちょっとリッチなお小遣いを稼ぐというのも、シニア行政書士のワークスタイルのひとつです。
また、行政書士の資格を、必ずしも仕事に結びつける必要はありません。行政書士試験の学習を通じて培った法律知識は、実は日常のさまざまな場面で活用できるものです。近しい人がトラブルに巻き込まれたときに、法律の知識を活かして、アドバイスをしてあげられるというのも、行政書士の魅力のひとつとして数えても良いかもしれません。

9.行政書士と年収(勤務行政書士という生き方)

行政書士を目指す人の中には「営業力に自信がないので独立開業する勇気はない。できれば、どこかの行政書士事務所で働きたい」という人も少なくないかと思います。このページでは、そんな勤務行政書士にスポットを当てたいと思います。

そもそも、行政書士として就職や転職をしようとした場合、求人はどれくらいあるものなのでしょうか。ハローワークのインターネットサービスで、試しに「東京都×行政書士」で検索してみると、ヒット数は約30件ほどです。もちろん、時期によって多少の変動はあると思いますが、東京都でこの状況ですから、他の地域ではもっと少ないことが予想されます。

狭き門をくぐりぬけて、たとえ行政書士事務所への就職・転職が決まったとしても、皆がみな、年収の面でバラ色になれるわけではありません。「行政書士の資格はあるものの経験はない」といった場合の賃金は、月20万円に届かないケースもあるようです。行政書士資格取得直後は、当然のことですが、だれもが未経験です。そう考えると、勤務行政書士になることに、ついつい二の足を踏んでしまいがちですが……。

実は、未経験でも厚遇されるケースがあります。それは、営業経験者です。実際に、さきほどの30件の中にも「営業経験・営業力のある方厚遇」という求人が数多くありました。同じように未経験でも、営業力のある勤務行政書士と、営業力のない勤務行政書士では、年収に2倍以上の開きが出ることも少なくありません。

行政書士の業務は多岐にわたります。すべての業務に精通している“スーパー行政書士”なんて存在しませんので、日々の仕事の中では、たとえベテランの行政書士であっても、初めての案件に直面することがあります。その意味では、だれもが未経験になりうると言えます。むしろ勤務行政書士に求められるのは、経験よりも、新規案件にも果敢に飛び込むチャレンジ精神なのかもしれません。営業力のある勤務行政書士が厚遇されるのも、そのあたりが理由のひとつなのでしょう。

このように、勤務行政書士という生き方は決して楽ではありません。行政書士は、難関資格です。にもかかわらず、年収の面で何かが約束されているわけでもありません。しかし、苦労をいとわず、自分の道は自分で切り拓きたいというタイプの人にはやりがいがあり、そして、頑張りに見合った対価が得られる仕事であることは間違いなさそうです。

8.行政書士の年収をもっとアップさせるために

お客さんは困っています。
自分が置かれている状況に困るとともに、その悩みを誰に相談すれば良いのかわからずに困っているケースが実は少なくありません。
そうした中、行政書士には、法律の相談窓口になることが求められています。まずは話を聞いた上で、適切な相談相手をアドバイスする、まさに「窓口」あるいは「受付」のイメージです。
案件によっては、行政書士としての仕事につながらず、お金をいただくことはできないかもしれません。しかし、だからと言って決しておろそかにしてはいけません。親身な対応は、評判などの形で必ずや自分に返ってくるはずです。あるいは、仕事を回した先の士業から、今度はお返しに、別の仕事を紹介されるなんてこともあるかもしれません。高年収を得ている行政書士は、たとえ仕事に直接結び付かないとしても、お客さんや、他の士業との関係をとても大切にしているものです。
広大な業務範囲を持つ行政書士ですが、それでも法律上、対応することのできない法律分野も存在します。上で述べたように、他の専門家につなぐ、というのも良いのですが、高年収を目指す上では、自分のところですべて解決できるよう、サービスの「ワンストップ化」も検討したいところです。社会保険労務士の資格も取得し、対応業務の幅を広げる。あるいは司法書士を雇用して、行政書士業務との相乗効果を図る。経営者感覚を持って、こうした経営戦略を練ることも、安定した事務所運営と年収確保のためには必須であると言えます。
資格試験の学習を通じて、どんなに完璧に法律知識を身につけたとしても、開業後、自身の力だけですべての法律問題を解決することはできません。たとえできたとしても、高い年収を得るという観点に立つと、決して効率的とは言えないでしょう。得意分野を見定めて、それに特化しながら、お客さんにアピールする。そして、不得意分野に関しては、積極的に他の士業、あるいは他の同業者を活用する。そうした姿勢こそが、遠回りなように見えて、実は年収をアップさせる近道だったりするのです。

7.行政書士の年収を決めるは、受注単価にあらず!

「1件の裁判に勝利して、報酬3,000万円」
一般の金銭感覚ではなかなかイメージできませんが、弁護士の世界では十分にありえる話です。
「1件の申請を処理して、報酬5万円」
行政書士の世界では、これまたありえる話です。というよりも、日常茶飯事と言っても良いかもしれません。
この数字だけを見ると、年収の面では、行政書士は弁護士にまったく太刀打ちできないように思えます。しかし、内情は色々なカラクリがあって、実際はそんなこともありません。
たとえば、さきほどの「1件の裁判に勝利して、報酬3,000万円」のケース。こうした大きな裁判では、何人もの弁護士がチームで取り組みます。報酬も当然分割されますし、また、案件が終了するまでに数年を要することも決して珍しくありません。
対して、「1件の申請を処理して、報酬5万円」のケース。こちらを担当するのは、もちろん1人の行政書士です。そして、案件終了までにかかる時間は数日程度。しかも行政書士の場合には、複数案件を同時進行で進めることも十分に可能です。
何人もの人と、何年もの時間をかけて稼ぐ3,000万円と、1人で数日程度で稼げる5万円。どちらが割の良い仕事でしょうか?
行政書士にとって、年収の決め手となるのは、受注単価ではありません。むしろ大事なのは、処理効率です。蓄積したノウハウでもって、いかに効率的に案件を処理していくかがポイントというわけです。前のページで紹介した「専門性(得意分野)を持つこと」は、営業の武器になるだけでなく、処理効率を高める上でも有効です。
実際に、高い年収を得ている行政書士は、この点を徹底しています。処理作業を平準化することで、サービスの質とスピードを維持し、補助者を雇ってドンドン処理していきます。弁護士と行政書士は、どちらも同じ法律家ではありますが、その経営戦略は、まったくの別物です。そして別物であるからこそ、行政書士だって弁護士と同等、場合によっては、それ以上の年収を稼ぐことができるのです。

行政書士の「年収」と「業務分野」の関係

行政書士の業務範囲は多岐にわたります。少し専門的な言い方をしますと、行政書士は、権利義務または事実証明に関する書類のすべてを取り扱うことができ、作成できる許認可・届出書類の数は1万種類を超えます。われわれにとって身近なところでは、アパートを借りるときの賃貸契約書や、就職するときに交わす雇用契約書、あるいは離婚協議書などもすべて、行政書士の守備範囲です。
もちろん、広大な領域のすべてに精通しているに越したことはありません。しかし実際には、そんな“スーパー行政書士”は存在しません。また、アピールの仕方を間違えると、「何でもできる」ということは、むしろ高年収を目指す上で弊害になる恐れさえあります。
では、高年収を目指す行政書士にとって、業務分野とはどのようにあるべきなのでしょうか?大事なのは、横に広げることではなく、奥に深めること、つまり専門性を持つことです。お客さんの立場になって考えてみてください。たとえば、離婚問題に悩んでいたとして、あなたなら、「何でもできます」という行政書士と、「離婚問題を得意としています」という行政書士の、どちらに相談しますか?答えは明白ですよね。低年収に悩む行政書士の中には、このことを理解していない人も実は少なくありません。
開業して間もない頃は、自分の適性もまだわからず、専門性を持つことは難しいかもしれません。しかし、行政書士としての経験を積み、ノウハウを蓄えていく中で、自分の得意な分野は自ずと見えてくるはずです。
また、自身の業務分野を定める上では、マーケットに対する目配りも忘れてはいけません。たとえば、「外国語が得意なので、国籍・戸籍関連の業務を専門にしよう」。発想自体は間違っていません。しかし、あなたの事務所の所在地が典型的な地方都市であった場合、お客さんとして見込める外国籍の方があまりいない、ということだって考えられます。同じような理由で、農村部で、法人設立業務を専門にするというのも得策ではないでしょう。
専門性を持つ、と言っても、何でもかんでも深めれば良いわけではありません。自身の得意分野であり、なおかつ、それがマーケットに合致したものであるかどうかを、きちんと見極めることをくれぐれも忘れないようにしてください。

行政書士の年収を左右する「広告」

行政書士のことを、一般の人はどの程度知っているでしょうか?
名前は聞いたことがあるでしょう。行政書士を主人公にしたドラマなどもありましたので、法律分野の資格であること、そして文書を作成する仕事が中心であることも何となく知っているかもしれません。しかし、提供している具体的なサービス内容となると、首をかしげてしまう人も多いのではないでしょうか。
行政書士がどんなサービスを提供しているのかを知ってもらうことこそが、営業の第一歩、そして高年収を得るための第一歩です。そこで、行政書士の知名度を高めるとともに、格好の営業ツールとなるのが、広告です。今後、あなたが行政書士として、高年収を目指すなら、ぜひとも検討したいツールのひとつです。
かつては、士業の広告を見かけることはほとんどありませんでした。しかし最近は、電車内の広告スペースはもとより、テレビCMなどでも、たとえば債務処理を扱う法律事務所の広告・宣伝を見かけるようになりました。
「そもそも、行政書士は広告を出しても良いのか」という疑問をお持ちの人もいるかもしれません。結論を述べますと、行政書士会によって広告に関する指針が示されていて、いくつかの制約こそありますが、行政書士が広告を出すことは原則自由です。
いくつかの制約がある、と述べましたが、それほど難しいことではありません。一例として、大阪府行政書士会が禁止する広告の例をあげてみます。
(1)事実に合致しない広告
(2)誤導又は誤認のおそれのある広告
(3)誇大又は過度な期待を抱かせる広告
(4)特定の会員又は会員の事務所と比較した広告
(5)法令又は日本行政書士連合会若しくは本会の会則及び規約に違反する広告
(6)依頼者を表示した広告
(7)受託中の案件又は過去に取扱い若しくは関与した案件を表示した広告
(8)その他行政書士の品位又は信用を損なうおそれのある広告

制約と言っても当然のことばかりです。まっとうな内容の広告であれば、問題ないことがおわかりいただけると思います。
それでは、実際にどこに広告を出すべきか?
各事務所の方針や立地などによって変わってくると思いますが、許認可が必要な業界の業界誌というのも、ひとつの手かもしれません。ただし、広告掲載の費用は決して安くはありません。欲張りすぎて、かえって年収がダウンするなんてことがないよう、広告戦略を練る上では、慎重な姿勢も忘れてはいけません。

高年収、もう一つのカギは「顧客の囲い込み」

「大半の行政書士とお客さんの関係は1回の書類作成で完結」と書きました。基本は、確かにそうです。しかし、税理士や社会保険労務士のように毎月とまではいかなくても、固定客をつかまえて継続的な受注につなげ、高年収を得ている行政書士も存在します。固定客をつかまえるためのコツはずばり、チャンスを見逃さないことです。

【チャンス①:自動車販売店から、車庫証明などの書類作成の依頼を受けました】

自動車販売店は、当たり前のことですが、1台販売していくらという商売です。そのため、毎月必ず、車が売れるごとに書類作成作業が発生します。行政書士にとっては、それだけ、お客さんになってもらえるチャンスがあるということです。たとえ顧問契約は難しくても、しっかりとした仕事をすれば、“お得意さん”になってくれる可能性は十分にあります。言うなれば、リピーター化による「顧客の囲い込み」です。

【チャンス②:大学卒業と就職を控えた留学生からビザの切り替えの相談を受けました】

海外からの留学生にとって、情報は命。そのため、留学生はさまざまなネットワークを独自に築いていることが少なくありません。相談者が、大学卒業と就職を控えているのなら、その友人もまた同様の状況にある可能性が大です。親身になって対応すれば、お客さんとして、別の友人を紹介してくれるかもしれません。また、ネットワーク内での口コミ効果だって期待できます。言うなれば、お客さんのネットワークを利用した芋づる式の「顧客の囲い込み」です。
顧客の割合は、新規顧客8割に対して、固定客は2割。しかし、わずか2割の固定客が全体の8割の利益を生む、といったケースも少なくありません(ビジネスの世界では「20対80の法則」「パレートの法則」などと呼ばれています)。
高年収を目指す行政書士にとっては、新規のお客さんをつかまえることももちろん大事ですが、つかまえたお客さんをしっかりとつなぎとめておくことも大事です。行政書士は、他の士業と比べて「顧問契約」という手段を使うことの難しい資格ですが、「顧客の囲い込み」のためのチャンスを活かすか・見逃すかで、その年収は大きく違ってくるはずです。

行政書士、高年収のカギは「新規顧客開拓力」

行政書士にとって、高年収を得るために新規顧客開拓が重要であることはわかりました。では、その新規顧客を獲得するためには、どうすれば良いのでしょうか?
ここでは、少し具体的な話をさせていただきます。

よほど緊急の場合を除いて、お客さんが最初の相談で、行政書士にいきなり仕事を依頼することはまずありません。
初回の着地点としては、電話での相談ならば「少し考えてみます」、面会での相談ならば「持ち帰って検討します」などの反応が多いのではないでしょうか。
では、その言葉を信じて待っていれば、お客さんの方から連絡してきてくれるのか?

いいえ。自発的に連絡をくれるお客さんの方がまれなはずです。
「商談の数日後にフォローの電話をすると受注確率が高まる」逆に「商談の1ヶ月後に電話をしても、既に他社に決まっていることが多い」営業経験をお持ちの方ならおわかりいただけると思いますが、行政書士における営業(=新規顧客開拓)も基本的には同じです。

少し話がそれますが、AIDMAモデルをご存知でしょうか?このモデルによると、人は商品やサービスを購入する際、Attention(注意)→Interest(興味)→Desire(欲求)→Memory(記憶)のプロセスを経て、Action(購買)に至るとされています。

電話にせよ面会にせよ、何か悩み事を抱えて行政書士に相談しにきている時点で、お客さんの心の中では既に「欲求」までプロセスが進んでいます。つまり、「購買」まではあと一歩。背中をあと一押ししてあげれば良いのです。

1度の電話や面会だけで顔と名前を覚えてもらうことは、どんな高年収の“売れっ子”行政書士でも難しいでしょう。ですので「記憶」してもらうためには、後日のアフターフォローが欠かせないわけです。もちろん、単なるゴリ押しの営業電話ではなく、お客さんの相談内容とニーズを踏まえた適切なフォローであることが大前提ですが…。

電話をする時間や手間を惜しんではいけません。
10分のアフターフォローの電話を積み重ねることが、結局は、高年収へとつながる近道なのですから。

行政書士も、高年収の決め手は「営業力」

お客さんは、「行政書士」という肩書きにお金を払うわけではありません。提供されるサービスにお金を払ってくれるのです。
つまり、資格を取得して開業した状態というのは、お店にたとえるなら、「○○商店」という看板を出しただけなのと同じ。
そこで取り扱っている商品をアピールし、お客さんを呼び込まないことには商売にならないのは、お店も行政書士も何ら変わりありません。

できるだけ多くのお客さんを呼び込むために必要になってくるのが「営業力」です。
行政書士として“勝ち組”に入る(=高い年収を得る)ためには、この営業力が欠かせません。

裏を返せば、客商売をしている人や、営業畑で活躍するサラリーマンなどは、この資質をすでに備えていますので、行政書士資格に挑戦する意義、そして高い年収を得て成功する可能性は十分にあると言えそうです。
ちなみに営業力は、大きく2つに分類することができます。
1つは、新規顧客を開拓する力。もう1つは、固定客をつなぎとめる力です。

まずは、「新規顧客を開拓する力」について説明します。営業力と聞いて、まず思いつくのはこちらだと思いますが、数ある士業の中でも特に行政書士については、新規顧客開拓が重要になってきます。
というよりも、新規顧客を開拓する力を持たない行政書士は、高年収を得ることはもとより、この世界で生き抜くことさえ難しい、と言っても過言ではないでしょう。

たとえば、税理士や社会保険労務士の業務を想像してみてください。
税理士には月次決算、社会保険労務士には給与や社会保険料の計算といった、毎月必ず発生する業務があります。
つまり、一度お客さんをつかまえることができれば、顧問契約という形で、毎月定期的にお仕事をもらうことができます。

一方、行政書士は、と言いますと、もちろん顧問契約という形で仕事をしている人もいますが、大半の行政書士とお客さんの関係は1回の書類作成で完結。
そのため、次から次へと新規顧客を開拓していかないことには、仕事自体が成り立たないわけです。
行政書士にとって、新規顧客を開拓する力の有無は、文字通り、死活問題であることがおわかりいただけると思います。



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